IL FUGO _ RESTAURANT - KANAGAWA

イルフーゴ _ レストラン - 藤沢/神奈川

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雑多な都市に埋れる小さな入口。それは、古いビルの一角にあり、道路へ向い緑青(ろくしょう)に包んだ口を開けている。ここの階段を降りていく。次第に街の喧騒が遠のき、インナーの世界観に誘導され、階段を折れると僅かに開けた明るいホール(ギャラリ―)へと至る。そこの一面に在る内外の結界、壁(大とびら)を回転させると、雰囲気が裏返ったように、別の世界が現れる。インテリアはモダンなデザインで作られた<洞窟的雰囲気>を湛える<隠れ家>のような所。そのような空気は「外壁のような素材」「寂(さ)びのある質感と色」「変転した壁と天井の形」「奥行のある空間」「落とされた照度」が作り出すものだろう。暖炉の炎と照明の灯りが落着く暖色を満す中、僅か10名をもてなすカウンター席が用意されている。そこへ座ると、正面すぐ向うで調理されたイタリアンのコースが目の前で順次、丁寧に贅沢に振る舞われるのだ。

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与えられた場所は、地階にあり、狭く景色も光もないという条件。それは、内へ如何に「サービスされる(客側)有効スペースを大きく取れるか」「魅力的な世界を作れるか」が問われることであった。これらに対し、必要機能と必要条件の納まりと取合いの寸法を極力小さく抑え、それらの場所と場所を直線で結んでいった――「柱・梁を避ける、ダクト・パイプスペースを遮蔽する」「必要な角度で光源を確保する」「必要機器を入込む」「必要収納を取る」「開ける扉を差伸べる角度で置く」「調理の飛跳ねや垂れを避ける角度を作る」「壁や天井に圧迫感を欠く広がりの角度を与える」・・・・・・

結果、そうしたラインによって生まれたのが、空間を縦横無尽に行交う「斜傾の形」。これらは、素直に出た必然の形でありながら、同時に個性を包含した形ともなり、固有の世界観を創出させる。デザインは、条件を場にそぐう形へと解き繋いでゆく感覚を持ち、粉飾する造形性とは異なる贅物を削いだ空間そのものを作っている。

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各要素がボードとボードで構成されることを素直に表した。様々な角度の面がパラパラと展開するパネルは、時に点や線の形でピタリと一つにまとまる。床・壁・天井という3者は、取合いが、関連し合い繋がりゆく。或は、平面図で規定した一枚の斜め壁の形が表裏で別の空間性を規定する。つまり、一部で始まった形が別の形や空間の伏線になる感覚。それらは、造形の奔放性と規律性が混沌とした中に作意の美や遊び心を見出すものだ。

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エントランスでさりげなく切替わる動線軸、ジグザグと折上る天井は、歩を進めると手前の形に蹴られて見えなかった別の形が顔を出し、奥へ至って振向くと来た時と違う造形の方向性や展開性を目の当りにする。これらは一様な垂直壁や水平天井と異なり、圧迫性をにわかに欠き、空間の中で伸びや表情を変容させるしかけとなるものだ。

場の狭さゆえ、基本奥へただ一本伸びる単一空間と行き戻る動線。だが、これら何れの解法も、そこにシークエンスの展開を仕組み、豊かな空間の広がりを形成する試みとなる。

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道路からのアプローチに関し、唯一の個性を放てるもの、しかし、都市や建築物に対し出過ぎず、それとの繋ぎになり埋れることができる素材や色を求めた。街中を渉猟し、使われていない色――しかし、外部に使用しても違和感ない自然なもの。それが、銅が錆びた緑青(緑青風塗装)だ。このすでに「寂(さ)び」を宿したテクスチャーと、それとなく誘(いざな)う形の「斜形」を持つ「アプローチ=階段空間」により、「外=都市」と「内=店」を繋いだ。そうした外に対する在り方の感覚は、内に10席しか持たない店が、主張し過ぎず、さりげなくこだわりの料理を客に差出すスタンスと同調するように思われた。

 

この都市で、ゆったりとした平生の気持ちを延長したまま入れる所。しかし、料理においても、空間においても、未見で稀代な時を堪能できる特別を秘している。そう感じられる場所になれればと考えた。

TEXT by 田中伸明

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IL FUGO _ ITALIAN RESTAURANT

(イル・フーゴ _ イタリアンレストラン)

 

LOCATION:

FUJISAWA, KANAGAWA (神奈川県藤沢市)

CLIENT:

LUCCA (ルッカ)

デザイン(基本設計・実施設計・監理): スタジオ・ニーネ 田中伸明
 

プロジェクト統括: 梶浦暁建築設計事務所
 

写真: 井上隆司、田中伸明

受賞:

サンワカンパニー デザインアワード 2020 入賞