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SAKAGURA | HIYAMIZU SAKE VILLAGE

REHABILITATION OF OLD JAPANESE TRADITIONAL SAKE BREWERY STOREHOUSE

IBARAKI

Hiyamizu Sake Village 酒蔵(冷水酒造) - 石岡/茨城

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古くは――。大正期に建てられた酒蔵(さかぐら)。かつての酒造りは疾うに閉鎖され、ドアも窓も閉切った暗中の物置き場へと変わり久しかった――。18代目が一念発起、今般、新たな酒造りを以て(クラフトサケ)、ここを再稼働する。汚れ、痛み、不具合が諸処に現れた蔵を、今に活用すべく蘇生した改修(リハビリテーション)のプロジェクトだ。
蔵元の人となり、事業の経緯、人目につく立地、施設に期待する発信の役、寂れた商店街への憂い事などを前にしても。はたまた、既存意匠のハイカラさ加減を、当時から現今ならばと置換えてみても。……過去へ執着/拘泥することも、古き建物よろしく薄暗い空間や隈を醸すことも、そぐわない逆の方向性だと直感した。とはいえ、歴史ある建物を基にする以上、既存をリスペクトすることと、保存する要所の選定は、創造/改変/介入に先だつ顧慮となる。

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新風を吹込む――。すなわち、活動の役を失し廃れた、既存の《古く暗い静的空間》へ、《現代に活きる機能・性能やプログラム》と《新しく明るい動的な形態や空間動線(シークエンス)》を貫入、流動し、浸潤させる――時代の上でも、事業の上でも、機能の上でも、意匠の上でも、沈滞した「古き」上へ積極的に鮮明に「今」を創造する、……だが両者は上手く「合一」している状態。意匠において、「新」は用途や空間を、体感的/視覚的に、方々へ流れ巡り貫くストーリーを展開させる連続・呼応・連鎖・遷移の「繋がる形/繋げる形」である。それらは「旧」に毅然と対比し、真新しい面的要素とシャープな動的ラインを現すも、利き所は押さえ(新旧がぶつかる箇所)、「旧」が丁寧に読み解かれて「新」は色も形も納まりも違和感なく接合・融合――互いは連なった形姿へと昇華する(実測を基に、原寸図によって場所場所に応じたオリジナル形の納まりを模索した――別して開口部)。

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風穴を開け、結ぶ――。“小さな作為――直線形で繋いだり、字義通り風穴を開けたり”で、この敷地における既存建物の配置や内外の関係(コンテクスト)を明確化・活性化し、意味を込めて益するものへ導いた。存在が乖離・孤立していた既存の鉄骨製看板を蔵と同じ要素で化粧し、高さがない新規の塀で建物と一直線に結ぶ。同時に、一体性ある新しい領域の拡がり「芝生のイベント広場」も規定した。この広場は、周囲や街へ、新しいアクティビティやコミュニケーションを生み出し、景観の繋がりも拡大させる。また、時として東のファサードに開く穴(ささら子下見板貼りの外壁然とした外部販売用ドア)は、建物内とそれらとを飲食の供給で結ぶのである。――そして、同様の“小さな作為”を以て、象徴的/観念的/精神的な空間性も生むという、さらなる向上を試みた。壁を取払ったり壁穴を開けたりして、蔵の奥に存する既存の「祠へ通ずる開口」に向け、「一直線の空間/視線」を貫き通した――これにより、ブリュワリーや試飲バーでは、「軸性/道筋の感覚」を与えた形状の先方、最奥に、外の祠がちらりと覗く。「酒を醸すことが神事で、神と人とを結びつける対話/作法/行事」である感覚を、闡明化・顕在化している。既存の配置は動かさず、“小さな作為”の触発で、潜在する敷地/空間の本質を掘り起こして強調・明示、新たな酒造りへの想いや願いとも相まって、この場にしか生じ得ない意味合いや独特の空気を帯びた。それはこの建築が蔵する精髄になっている。

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現代へ継ぐ/現代を接ぐ――。すべては既存が有していた色合い。「黄/黄茶/緑/白の壁面」や「黒/焦茶/赤茶/緑の木部」の違いは、室ごとの個性をアピールするが、むしろ先人/前代の「よすが」を引継ぐことを表す――既存建物内は改装を重ねた感があり、室ごとに様式や趣味を違え、色(≒時代)に一貫性を欠いていたのだ。そうした既存の意匠性は、内外それぞれで分離・独立した色感をつくってもいた。例えば、建具の一部は、同じ一枚ながら表裏で別々、屋外の色と室内の色が塗られていた。今回の新規建具においても、同様の意匠観を踏襲――枠や扉が「内外」や「室室」の境で塗分けられ、面した各々の空間側へ従属する色をもつ。――そして、各部屋には、記憶/記録の証左や断片として、新規意匠の根源として、必ず一切いじっていない残された既存の実相(オリジナル)が覗くのである。屋内において、それら古いもの(オリジナル)は下階で断片的だが、上階で新旧併存の割合は逆転し、新しいものの方が断片的になる。来し方行く末を思うように「下階の新」「上階の旧」と二分した世界観を接いでいる。
また、断熱や構造補強といった現代の必要条件を理由に、真壁を大壁へ改変した(既存の屋内はすべて真壁)。それら大壁にせよ、現代的素材や性能――水密・気密・耐水・防汚・衛生・強度――を具えた分明に今様な納まりにせよ、ピン角・留め・面一という表現にせよ、既存に対比して瞭然たる新来は、現代に接いだ介入部を一目で認識させる言わば「記号」である。

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新しくは――。緑の広場が爽やかな空気を街角へ運び、新生した蔵は「新旧混合の個性」を活き活きと発する。中へ入った奥、陽光で明るむ開口の先に、深い陰翳と緑に包まれた閑寂な神域が覗き、祠からのオーラを感取できる。以前に比すると、この場には抜ける晴れやかさが差して、明澄さが加わった。勝手ながら……神様とご先祖様が、新たな出発・活動を喜んでいるようにも、先を見守ってくれるようにも、感を催されるのだ。

TEXT by 田中伸明

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【改修前既存建物】

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SAKAGURA | HIYAMIZU SAKE VILLAGE

REHABILITATION OF OLD JAPANESE TRADITIONAL SAKE BREWERY STOREHOUSE 

(酒蔵の改修)

LOCATION:

ISHIOKA, IBARAKI (茨城県石岡市)

CLIENT:

HIYAMIZU SHUZO (冷水酒造)

PROJECT:
意匠(基本設計・実施設計・監理): スタジオ・ニーネ 田中伸明
企画: 副島慎太郎
統括: 梶浦暁建築設計事務所
設備: NoMaDoS
構造: kplus
施工: 鈴縫工業

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