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各々のプロジェクトの各々のステージで各々の種のスケッチを描くが、その中でも施主へのプレゼンテーションに使用したスケッチを並べている。しかし、プロジェクトは様々な要因によって当初の案通りには実現しないことがしばしば。これらは形を変えて実現した絵となったり、プロジェクトが都合で沙汰止みとなった夢の絵であったりというものばかりである。机上のデザインで留まったとはいえ、それぞれのプロジェクトに真摯に取り組んで見出した新しい提案を持つものである。
TEXT by 田中伸明
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庇蔭された小世界
庇蔭(ひいん)された
小世界
日本
沖縄に計画された娯楽施設である。新しいオリジナルデザインの提案であっても、そこの風土を継承する感覚を盛り込みたかった。左右に振り分け回り込ませる動線を作る壁(塀)は、琉球古民家の「ヒンプン」から来ていて、その裏には自然光の下、ガジュマルが植わる中庭「ナー」が開ける。高々と迫り上がった天井のスカイライトは、強い日差しの進入を追い遣るものだが、古民家の赤瓦屋根が反転したしたような形をそこに充てている。大きく張り出す日焼けした古木の天井は、古民家の庇「アマハジ」を思い起こすだろう。それらは、目隠し、魔除け、防風、防火など琉球古民家が持つ外部から守ることでより快適な内部を確保するという伝統のデザイン手法が、ここにおいて、内部により完結した独自の小世界を獲得するという読み替えになっている。シーサー、石灰岩、水色の水盤は沖縄の海、彩度の高い色は紅型(びんがた)といったものも、瞭然とその土地らしさを追従したものだ。
家並み形が継ぎ繋ぐ